【KAIZEN9】HKMはなぜ必要か Ⅳ

今回:「既存の問題解決手法は身に付かない」➡「身に付かない原因は頓挫するからだ」➡「頓挫原因を突き止めて原因対策をしているのがHKMだ」。

 

3)既存の問題解決活動は何故頓挫するのだろう

前回投稿で問題解決手法が身に付かないのは、kaizen活動が頓挫してしまうために「問題解決行動を完結する」経験、つまり「学び」が起きないからであることは分かりました。

では、頓挫する原因は何でしょうか。これが解明できると対策を講じることができます。 

頓挫する原因は大きく分けて3つに分けられるます。

そのうちの1つは「活動する人や組織側に存在する」原因であり、他方2つは「QC等の問題解決手法側に存在する」原因です。

1つ目の原因は社内改善活動に参加する、人や組織に存在するもので、「問題解決活動を自分こととしてとらえていない」と言うことです。

この原因は、組織の方針として自社製品や自社サービスに関するQC型改善活動が途中挫折する原因です。

会社の改善活動に関しては、会社の方針として社長の命令により業務改善活動が全社で開始しますがほとんどの場合途中で動かなくなります。

業務改善活動を実施しようとする会社は、会社として成り立っている、社会に存在する基盤を維持できている会社です。存在基盤を維持していられるのは、そこで働いている従業員が社長を頂点とする組織の方針に従って仕事をしているからです。つまり「経済的関係」を前提にした活動は何らの問題なく実行されている組織なのです。

業務改善活動実施の指示は、通常であれば社長を頂点とする指揮命令を実行できる組織を前提にして、発令されます。しかし、その命令は実質的に途中で挫折する事がほとんどです。

会社の業務改善活動に対しては、以下のような授業員の意見が大半を占めます。

「仕事ではなく業務外サービス」

「時間つぶし。そんな暇があれば仕事をするよ」

「棒グラフや円グラフを描けって。俺は小学生じゃない」

「統計なんて知らない。理数系学部出身者がやればいい」

「会社のためにするボランティア」

「社長の趣味にお付き合い」

「やりたい奴がやったらいい」

「言い出した人が自分たちでやったらいい」

等の思いの結果、嫌々やらされているので自分事と思うはずはありません。

学びには、段階があります。説明できる➡分析できる➡自分に対しての意味付けを知る➡行動する、です。会社命令で行われる改善活動にいては、自分における意味付けが存在しないのです。そのことは学びの次の段階である「行動」が発生しないと言う事を意味します。頓挫は当然の結論です。 

2つ目の頓挫原因は、「問題解決手法の中に潜んで」います。

従ってこの頓挫原因は会社であろうと個人であろうと同様に頓挫の原因になり、それは「問題解決手法のジレンマ」と言うことができる原因です。

何等かの技能について初心者から達人に至る過程を分類して、それぞれの段階に置ける特徴、例えば、外界を認識する方法、問題への取り組み方、技能の修得方法等の変化を示してくれる「ドレイファスモデル」と言う大変有名で、大変有用とされる仮説があります。HKMではこのモデルの知見を拝借し、達人への道であるHKMの修得度を測るメジャーとして、そして達人を目指す行動・訓練を考える際の羅針盤としています。

ドレイファスモデルによると、「初心者には頼るべきコンテキスト(文脈。前後関係や背景)に左右されないマニュアルが必要であり、これが無いと技能を使うことができない」と指摘されています。「コンテキストに左右されない」とは「個別の場面にすべてマッチする万能の」と言う事ではありません。それは「雨が降ったら傘をさせ」の様なマニュアルです。極端な話、「家の中にいる」、「マラソン大会に出て走っている」と言うコンテキストにおいても、とにかく雨が降ったら「傘をさす」の様なものを言います。つまり、「間違ってはいないけど、場面によっては適切ではない」程度のマニュアルです。

これがハンバーガーショップの接客マニュアル程度の変化の少ないコンテキストの中ならば、不自然さは残りますが、ネームプレートの初心者表示と相まって何とかなると思います。しかし、世の中に発生する「問題」のコンテキストは千差万別であり、厳密に考えると同じモンダイは世の中に2つと無いと思われます。つまり問題は極めて個別具体的な出来事であり、更には現実の利害の得喪が発生します。「問題解決」と言う場面においては初心者には「コンテキストに左右されないマニュアル」は役に立ちません。初心者は「具体的な問題用にカスタマイズした」ニュアルが必要なのです。

問題解決手法であるQC等は個別具体的なマニュアルではありません。それは、問題解決のためのプラットホーム(何らかの共通の作業をするための土台・場所)です。QCS等は、問題解決手法構築と言う関心に基づき「問題解決が上手にできた多くの成功例」の事例研究を行い、各事例の成功の原因を探り、それらをメタ化したセオリーです。QC等は多くの、異なる、具体的な場面の問題に対応するためのセオリーであり、それは問題解決のプラットホーム(コンテキストに左右されないマニュアル)なのです。

この様な「コンテキストに左右されないマニュアル」を「問題解決」と言う場面で使うには、そのマニュアルが定める領域に関してのそれ相当の「知識と経験」(注1)が必要であることは誰にでもすぐにわかることです。知識と経験がないので初心者と言います。従って初心者はフラットホームであるQCS等を使いこなすことはできません。ここに「問題解決手法のジレンマ」が発生します。

QC等を始めようとする者は間違いなく初心者です。もっともマニュアルを必要とするのは初心者ですが、全ての初心者が直面するであろう個々の問題に対応する個別具体的なマニュアルなんて作れるはずがありません。そしてQCS等はプラットホームであるため、使うためには使うための知識と経験が必要なのです。これでは問題解決活動は頓挫することは初めから決まっています。従ってQC等を始めた初心者は、を使っていたのでは技能の修得はできず、中級者にはなれないのです。まさに「問題解決手法のジレンマ」ですね。

頓挫する原因の3つ目は「教え方」の中に存在します。

従ってこの頓挫原因も会社、個人を問わず同様に頓挫の原因になります。

例えばQCSの各ステップは、先ほど申し上げた通り多くの事例研究から発見されたもので、大変合理的なステップを持っています。その「ステップ通り」の活動を「やりきれ」ば、いかなる問題でも同様に解決できる理屈です。私もこれに異論は全くありませんし、私も信じています。しかも、各ステップでは合理的で論理的な知識も用意されています。そしてそれらはQCの改善力を担保する手段であり、その高度化は知識の更なる補充によって行われます。従ってQCを講義する側としても、上記を踏まえて行います。

問題解決のステップを示します。第一ステップの定義を教えます。第一ステップを使う知識を教えます。合格点が取れるようになったら第2ステップの定義と知識を教えます。

しかし各ステップにおける知識は誰でもが理解できほど簡単なものではありませんのでなかなか合格レベルに達しません。結果、初級者中級者は自分で問題解決行動を起こすときには各ステップで合格点を採ることはできず、活動は頓挫します。

また、講義する側は、すでにQCSと言うプラットホームを使えるレベル、最低でも上級者以上の方なので、上記のようにステップ毎に講義をしていても、各ステップは自明のものとして1つに繋がっています。「もしかしたら、学習者は各ステップがバラバラになっているように理解しているのでは?」等の疑問さえ浮かびません。

でも、初心者・中級者には間違いなく改善活動はステップ毎にバラバラになったいわば「切り身魚」になっています。切り身をつなぎ合わせたら出来上がる「お魚」のイメージはありません。ましてやその「お魚」が泳ぐ姿(さかなを魚たらしめている本質的な動き)を想像できることは有りません。ステップ毎に集中する為に全体がわからない。分からないと、ステップの進行が怪しくなってくると、自分が何をしているのか、何をしたらいいのかがわからなくなるのです。彼らは、迷子になってしまい、活動は頓挫します。

3)HKMの必要性のまとめ

世の中は、問題と問題解決できています。換言すれば、世の中は、問題発生と問題を解決するためのシステムです。解決の適否が人の一生を左右します。だから問題解決能力が世界で一番有用な能力であると言うことができます。

日本にはQCという世界に誇る問題解決手法があります。しかしQCは使う人を選ぶのです。だからQCを使った問題解決活動は多くの場合に頓挫します。結果、問題解決力は世界で一番有用な能力であるにもかかわらず、問題解決能力手法を修得できる人がすくないのです。大変残念です。QC以外にも「問題解決手法」を教える本はたくさんあります。それらはQCの要約=簡易版に過ぎないものが多数を占めます。しかしそれらはQCが頓挫する事も知りませんし、当然に頓挫原因も知りません。さらに、自身がQC型に属していること自体も自覚していない類のものもあります。従ってそれらの手法ではQCの代替手法にはなりえませんので、「問題解決手法を修得できる人が少ない」と言う問題は解決できません。

私は誰でもが問題解決スキルを修得できる方法を作りたいと思いました。そこで5年ほど前、「なぜ問題解決処方は身に付かないか」「なぜ問題解決活動が頓挫するのか」を色々な方法(注2)を使って考えました。そこで得た頓挫原因を取り除くための仮説を考えました。それがHKMです。

HKMは頓挫しません。HKMは、問題解決活動の頓挫原因を徹底的に取り除き、学びを促進して、問題解決能力の向上を図り、もって問題解決するというシステムです。実務での体験と、専門分野の1つである教育に関する研究から作り上げました。そして実際の社員教育で使用した抜群の成功事例もった実効力の裏付けがあります。

HKMを一言に集約すると以下のように言うことができます。

①QCSと言う問題解決「知識」を、経験学習と言う理論を使って「技能=スキル」に変え、
②そしてその技能を達人になるためのトレーニング方法で磨きをかける能力開発メソッドです。
③キーワードは「お気楽♪♪」です。

どんなスキルの修得には段階があります。はじめは誰でもヨチヨチです。歩いているうちにだんだん一人前になっていくのです。この本は、一人前以上の歩き方をするための本ですが、誰でもスタートはヨチヨチです。HKMでお気楽にボチボチ行きましょう。私がご一緒します。

(注1): ヒロ曼荼羅の色々なステップから同じ回、次の回の「他のステップ」に伸びている「矢印線」は各ステップ間の論理的な関連を示しています。それらの矢印線を初心者や中級者は絶対に書くことはできません。書けないと言う事は使えない、と言う事です。第一にそのような関連があること自体考えもしないと思います。

(注2):分析に使った手法や知見は以下のようなものです。ドレイファスモデル、マインドマップをテキストとしたM-GTA分析、バリューグラフ分析、コルブ経験学習サイクル、CVCA、WCA等。著書名は巻末で紹介しています。

つづく

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